九品仏・浄真寺では、毎年春になると「二十五菩薩練供養」という厳かな儀式が行われる。これは浄土教の信仰に基づき、極楽から二十五の菩薩が亡者を迎えに来るという教えを視覚的に再現するものである。
この行事の起源には、一人の老尼の話が残されている。江戸の中頃、浄真寺に仕えていた尼僧が重い病に伏せっていた。死を間近にしてなお、尼は一心に阿弥陀仏を念じ、「極楽の迎えをこの目で見たい」と願い続けた。ある夜、桜が満開となった境内に、不思議な光が差し込み、風もないのに花が舞い始めた。
そこに現れたのは、金色の装束をまとった二十五の菩薩たち。蓮台に乗り、雲を渡り、光の道を進んで老尼の前に現れたという。尼は安らかな笑みを浮かべて息を引き取り、その魂は光の彼方へ導かれた。
この出来事を機に、寺では毎年、菩薩の姿を模した行列をつくり、念仏とともに境内を練り歩く「練供養」を始めた。菩薩役は白装束に仏面をつけ、観音、勢至、普賢などの諸尊を演じる。太鼓と鉦の音が鳴り響く中、人々は亡き人への想いを胸に静かに合掌する。
この行事は、亡者の魂を浄土へ導く祈りであり、生者にとっては死と向き合う静かなまなざしでもある。いまも浄真寺では、この古式ゆかしい儀礼が受け継がれ、多くの人がその光景に心を打たれている。
